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創作ストーリー
 
kokochi sun3 |THE LANDSCAPES
 
空から見下ろす景色と靴と
 
 
“景色”を革靴に投影すること。それを見た誰もが驚き、心躍るポジティブな足元を。
アイデアの始まりから完成までのプロセス。
その思いをご紹介します。
 

自然界の凹凸

 パーツごとに重なるアッパーのいびつな曲線は地形のよう。折り曲げられたヒールと、天に向かいながら翻るトゥは大地の突起を連想させる。アッパーに使用した素材はニベ。革の裏側の肉に程近い部位が故、繊維は粗く毛羽立ちが不均一なのが特徴だ。
 

その様はまるで上空から見下ろした岩肌や森林などの自然界の凹凸のように原始的で美しく、本作に“景色”を投影する助け舟となっている。

靴作家 × 手仕事 × スニーカー

 革靴の構造から逸脱せずに、靴作家が手仕事でスニーカーを作ったらどうなるのか。というお題を立てて今回の創作はスタートしました。靴作家の独創性と、手仕事で革靴を作る伝統的手法。そこにスニーカーというカテゴリーの違う風を入れることで、今まで見た
 

こともないようなものを創ることはできないか。そう考えまずは真鍮の丸管に靴紐を通した、甲の部分の風変わりなパーツを作成。それを基軸にアッパーのデザインは広がっていきました。

 
 
発想のジャンプ

 次にソールの構造。ランニングシューズよろしく、つま先の形状を革底で模して落胆しました。素材が変わっただけで形にさして変化はなく、全く心が動かされなかったのです。そこで今度は必要以上に大きく切った革底を底付けし、様々な形に切ったり、動かしたりを繰り返しました。そしてつま先に多く余った革底をくるりと天に翻した時、発想が突如ジャンプしたのです。翻った分厚いソールに見え隠れするアッパーの線が航空写真のように見えた瞬間でした。
 
 

保留の“アレ”

 「靴の中に景色がある!」と興奮したその矢先。私はとある人物に電話をしていました。兵庫県姫路市のタンナー、大谷皮革の大谷氏です。「保留になっていた“あれ”、何とかならない?」と、電話の内容はもちろん新しい革の話。“あれ”とは以前、暗礁に乗り上げていたニベ革のことでした。ニベとは長く不均一な毛足が特徴的な、皮のより肉に近い部位を加工したもので、強度もなく普通なら早々に漉き落とされてしまう部分です。数年前、私はどうしてもニベで靴を作りたくて、大谷氏とともに試行錯誤を繰り返していました。
 
 

 

 
 
ニベ、数十年の時を経て

 肉に程近い部位であるニベを残し、革にした時の厚みは約6ミリ。靴にするために必要とされる厚みは2ミリ前後なので、これでは話になりません。ならばと、それを薄く漉いてみれば今度は強度がなくなります。そんなこんなで頓挫した数年前の“あれ”を実現させたのは、工場の奥深くに眠っていたヴィンテージ・レザーでした。
 
 強度を保つため表皮を残し、さらにニベ面も残る革。それには薄い革が必要でした。数十年前に先代がなめした薄い革は若い牛の革を使用しており、なぜかニベも残っていました(これは奇跡的でした)。カリカリになった革を水で戻し染色と再加工。ストックは10枚余りしかありません。
 
 このように新しいマテリアルは数年前の大谷氏との企みを呼び、さらに数十年前の先代が作ったマテリアルをも掘り出しました。出来上がった革の名前に私は“ジオラマ”と名付けました。時間も人も超え、それぞれが馳せた景色に経緯を込め。
 

“地球”という名の革底

 約5ミリ。分厚くて硬い底用の革を水に浸し一晩寝かせます。一夜明け。水を含むことで繊維が膨張し、容易に曲げることのできるようになったそれを折り畳み、積み上げ、地層をイメージしたヒールを作りました。そして翻ったつま先の丘陵から、地面を這いつながる先にある地層までを総称し、それらをテラ・ソールと名付けました。テラ(terra)とはラテン語で地球の意。本作には景色を形作るための土台が必要だと感じたからです。
 
 歪なアッパーの曲線とテラ・ソール。それに新しいマテリアル。これらの要素が重なり合い、靴の中にいよいよ“景色”が鮮明に顔を覗かせます。THE LANDSCAPES の誕生です。
 

足元の“箱庭”に馳せる想い


 靴作家×手仕事×スニーカー。3つの要素を掛け合わせたとき一体どんな作品が生まれるのだろう。創作の始めに思い描いた旅の地図。漕ぎ出した船。不安と高揚感を抱えたその航海は思わぬ方向に舵を切りました。

 
 “景色”を革靴に投影すべく、新しく出来上がったマテリアルに“ジオラマ”、曲がりくねったソールには“地球”(テラ・ソール)と名付けました。創作の進行中は、革靴ではなくジオラマを作っているような、鷹になり滑空をしながらそれを眺めているような、今まで体験したことのない不思議な感覚が常に宿っていたような気がします。
 

 
 THE LANDSCAPES と名付けられた革靴に景色を描く際、努めたのは“隙間”を作るということ。履き手が自由な発想で、それぞれの景色を思い描ける。履き手それぞれの多様な感情を入れる箱を作りたかったのです。そのためにあえて抽象的で、良い意味曖昧な“景色”を表現したつもりです。
 
 幼い頃にあった景色や、見たこともない空想の世界。ノスタルジーやファンタジーを小さな箱庭に馳せ、夢見る素敵な時間に没頭する。この靴を履いた人々の“景色”が美しく、豊かな時間でありますよう。願いを込め。
 
                                                                      

2021年8月
靴作家・森田圭一

 


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