STORY
kokochi sun3 / GYATOR 006
古き良きアメリカの佇まい
鮮やかな色合いの力強いロゴが配された缶や、ブリキのデスクランプ。そしてワークブーツ。古き良きアメリカのモノの佇まいは、そのどれもが無骨でシンプル。私はモノを通し、その大らかで良い意味アバウトであろう、彼らの生活を想像しながら、少し昔のアメリカに思いを馳せるのが好きだったりします。
本作のアッパーのデザイン・モチーフはアメカジ。少しタイトに合わせたリーバイス501をロールアップし、靴下を見せながら履くとハマりそうなチャッカブーツ。ブーツといっても丈は程よく短めにすっきりとさせ、履口は広くフィッティングは良好。また側面から見えるシャープさと、上から見える少し間の抜けた顔立ちとのギャップは、古き良きアメリカへのオマージュと、ブランドの遊び心がフィットしている部分かもしれません。さらに何といっても極め付けは、“あのミッドソール”。原始的なギャートル・ソールと、アメカジベースのデザインとのミクスチャーが本作の醍醐味となっています。
アメカジと原始時代
足を包み込むように仕立てられた革製のミッドソールは、履きこむごとに馴染み、まるで足のように機能してくれます。このカップ状のミッドソールの名はギャートル・ソール。名前の由来はアニメ「はじめ人間ギャートルズ」から。そう、大声が文字の形の石になって飛んでいくあのアニメです。3ミリもある分厚い革を2枚、贅沢に使い立体にし、足を側面まで覆った作りに原始的なニュアンスを感じ取りました。
2006年にリリースされたギャートル・シリーズは、足なりになったカップ状のソールに安定感があり好評です。過去に発表した5作品はサンダルで、靴になるのは今回が初めての試み。しかもアッパーのコンセプトはアメカジと決まっていたので、違ったそれらをどうミックスするかに相当な時間を要しました。寝ても覚めても頭の中はアメカジと原始時代のことばかり。「あめかじとげんしじだい、あめかじとげんしじだい・・・」まるで念仏のように唱えながら創作に耽る自分を思い返しながら、その滑稽さを笑えるのは、今できうる全てを作品に投影できたからに他なりません。
奴らの足音のバラードと
古き良きアメリカの夕暮れのフリーウェイ
本文を書きながら妙に懐かしくなり、ふと、はじめ人間ギャートルズのエンディングテーマ「奴らの足音のバラード」を聴いてみました。すると何故か、頭の中に出てきたのはゴンとドテチンではなく、古き良きアメリカの夕暮れのフリーウェイでした。あの時はここにある一つの作品が、時代や場所を超えて繋がっているような気がして、少々恐れ多い気持ちになりましたが、しばらくして多分これは、そういうことなのだろうと推測しました。
古き良きアメリカに憧れたであろう、かまやつひろしがギャートルズの唄を歌い、ギャートル・シリーズを作った私がそれを聴き、古き良きアメリカを連想する。くるりくるりと連鎖が続き、モノコトが波のように押し寄せては返し、星のように流れては消えていきます。そして私はひとりごち、見たこともない原始時代とアメリカのあの時代に思いを馳せるのです。
何故だか全く違ったふたつの時代がくっついて、不思議にも一足の靴になりました。意識と無意識を行ったり来たりしながら、私なりに懸命に取り組んだ作品です。機会があれば、ぜひ足を通してみてください。いつも私の創る靴を見たり、履いたりしてくださる皆様へ。仕切れない感謝を胸に抱きつつ。