素材・技術
そよぐ風をイメージした革
このプロジェクトのための素材選び。アッパー素材を探していました。イメージは「そよぐ風」。マットなスムースレザー、革の繊維に少し空気を孕んだ、ふわりとした肌触り。たどり着いた先は「ポルティラ」と呼ばれる、人にも環境にも優しい革でした。
生産者は兵庫県たつの市にあるタツノラボ。その独自の製法は、なめし時に有害な重金属、化学物質を使用しないため、環境にも、肌にもやさしい革となっています。本来は、日本全国で増え続ける野生獣の皮をなめすタンナーですが、今回は特別に、野生獣ではない牛革と豚革を作っていただきました。今後は、ジビエレザー(野生獣を使用した革)を使用した靴も展開予定です。ご期待ください。
におわない靴中の秘密と、足なりになるミッドソール
BUILD には、足の裏が触れるミッドソールに、約4ミリ厚のフルタンニンレザーを使用しています。植物の渋でなめされた成牛の革は、匂いのもとである汗を吸収し、分解する効果があります。また靴中に溜まった汗の排出力は高く、カビの温床を防ぎます。さらに、水分を含んだミッドソールは柔らかくなり、体重のかかった部分を押し下げるので、履き手の足の形に馴染んでくれます。厚さ4ミリの革の中には、長く履くために大切な要素がたくさん詰まっています。
フラットより、少しだけ高いヒール
出来上がった試作品を履き込んで、気づいたことがありました。アッパーの踵の縫い目がパンクしてしまったのです。これはヒールが低いうえに、デザイン上、踵に硬さを持たせていないため、足が後ろに下がり、地面と擦れてしまっていたのです。調べていくと、フラットヒールの靴に、この症状が多く見られることが判明しました。そこでヒールを6ミリ高くし、それを改善。その結果、出来上がった、フラットよりほんの少しだけ高いヒールは、履いた時の見た目を、よりスマートに見せながら、故障の原因を抑えるヒールとなりました。
長く履くために交換を
BUILD のソールには、ラバーのハーフソールとヒールが採用されています。どちらも耐摩耗性に優れた、減りにくい素材なのですが、なくならないわけではありません。ハーフソールは次第に穴が開くでしょう。ヒールは踵から擦れて無くなっていくでしょう。そんなときは、それぞれ新しいゴムに交換をしてください。そうすることにより、革製のソールを傷つけることなく、長く履いていただけます。交換は当工房でもお受けできますし、街の修理屋さんでもご依頼いただけるかと思います。