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STORY

 

BUILD with Portierra|#003

 
限りなくシンプルなデザインであり
履き心地が良く
リペアを繰り返しながら長く愛用できる
暑い季節にぴったりな、革靴ができるまで
 
 

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道具という絶対条件

 
 “足を守る道具、その条件を満たす靴“という観点からサンダルを見た場合、それをデザインするのはとても大変なことだと感じています。何故なら靴とは違い、肌の露出している部分が多いサンダルは、歩行時に踵が浮くことがしばしば起こるからです。足と靴とが密着していなければ、当然歩きにくく、下手をすれば身体へ何らかの不具合が起こることもあるでしょう。ファッションアイテムでありながら、同時に道具としてきちんと機能するサンダルを目指すこと。これらをいかにクリアするかが本作の課題のひとつでした。
 
 
 
 

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甲を覆うということ

 
 デザインをするにあたり、まずはルールを決めました。それはどんなデザインになっても“甲を覆う”ということ。歩行時、足を蹴り出す時、靴の甲にはかなりのテンションがかかります。そこを革で覆うと、靴と足との密着度は高くなり、足の運びは幾分かスムーズになるはずだからです。
 
 しかし革で甲を覆うと困ったことが起こります。それは暑苦しく見えるのです。革が足に触れる部分が多いほど見た目は涼しげではなくなります。それならば爪先を見せる“前開き”にしようと思いついてはみたものの、木型の特性上、叶わないアイデアとなりました。
 
 
 

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キーワード探し

 
 具体的なデザインは決まっていませんでしたが、使用する革は決まっていました。革の繊維に少し空気を孕んだ、ふわりとした肌触りのマットなスムースレザー、ポルティラです。私はこの革の雰囲気を活かすデザインを完成させるために、イメージを言語化することにしました。その言葉が「慎ましさ」「清楚さ」という2つのキーワードです。道具であるために甲を覆うデザインであること。そして革からインスピレーションを受けたふたつのキーワード。これでおおまかなコンセプトの抽出が完了。暗いトンネルの向こうの光がぼんやりと見えてきた瞬間でした
 
 
 

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デザインを落とし込む

 
 次に「慎ましさ」「清楚さ」という言葉が孕んでいるニュアンスを、形にするならどういうことか、具体的にデザインに落としていきます。例えば、切り口は折り込んで見せない。縫い目も極力見せない。できる限り少ないパーツで構成する。…と、ここまで想像してみて、はっとしました。「これはアシンメトリーなデザインが面白いに違いない!」。まさに直感。時折、理論では計れない瞬間が降りてきます。こういう時は流れに身を任せます。早速、木型を手に取りデザインを描き、現在のデザインのベースが見事に完成しました。
 
 
 

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慎ましく、清楚であるスリッポン・サンダル

 
 このように、なんだか推理小説の謎解きをしているかのような創作の終わりに漕ぎ着けたのは2021年2月のこと。構想が始まったのが2020年の夏だったので、完成まで半年ほどかかったことになります。
 
 結局、あれだけ悩んだあげく完成したのはサンダルというより、どちらかというとスリッポンになりました。「なんだ、サンダルではないじゃないか」と、お叱りを受けるかもしれませんが、私はこれでよかったと思っています。なぜなら、革の切り口を見せない、縫い目も見せないなど、さまざまな条件をクリアし、必然的にできたデザインは慎ましく、清楚であり、しっかりと甲を覆った、履き心地を考慮しながら、ファッション性に富む、暑い季節に重宝するプロダクトとなったからです。
 
 限りなくシンプルなデザインであり、履き心地が良く、リペアを繰り返しながら長く愛用できる、暑い季節にぴったりな革靴が完成しました。さまざまなコーディネイトで、本作を楽しんでいただきましたら幸いです。
 
 

靴作家・森田圭一(2021年4月)

 
 
 
 
 


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