- Story -
kokochi sun3 / ノエマ・スニーカー
２００７年に工房を開設し、右往左往しながら現在に至ります。開設から１０年あまり経つと、お客様も生活環境が変わります。独身だった女性は、結婚をしてお母さんになっていたり。環境が変わると、赴く場所が変わり、必要な道具や服が変わります。そして履くべき靴も。
長年kokochi sun３の靴を履いていただいている方々の足元は当然、革靴です。それを履き、様々なモノコトの出会いを体験するために、街へ出かけ、たくさん歩きます。本当の革底でアスファルトを蹴ることに慣れてしまうと、スニーカーを履いた時の、足裏のふわふわとした感覚が、とてもくすぐったく感じ、なんだか奇妙な感覚に至ります。その点、革底は地面を自分の足で掴んでいる感覚を体感でき、履きこむほどに、使い手の足のように機能してくれます。ただし、場所を間違わなければ。
とあるお客様に、お子様が産まれました。すくすく成長し、公園を走りまわります。当然お母さんも子供を追いかけます。その時に履いていたのは、kokochi sun3の革靴ではなく、当然スニーカーでした。お母さん曰く、kokochi sun3の革靴（革底）ではちょっと違うし、市販のスニーカーは誰かとかぶる。でもお洒落したいし、革靴の“あの”感じの履き感で、脱ぎ履きが楽な靴が欲しい。とのこと。なんだか困っているようなので、何とかしてあげたいなと、ぼんやりと創作が始まったのを覚えています。
スニーカーといっても、構造は革靴とほぼ同じです。ノエマ・スニーカーは木型に中底を貼り付け、アッパーを吊り込みます。その後ソールを付け、ゴムテープを巻き、それを縫い完成します。一般的なスニーカーよりも工程の数は多く、これが長く履き続けられる理由の一つとなっています。また、いつもより中底の厚さ（通常４ミリ）を少し薄くし、革底で歩いた時の、足で地面を掴む感覚を再現しました。公園で誰ともかぶらず、脱ぎ履きが簡単で、子供と一緒に走れる、スニーカーのような革靴は、とあるお客様の一声から生まれました。
例えばそれが革でできていて、リペアをしながら長く履けてしまって、おまけになかなかの経年変化を遂げてくれたら最高だなと思って作ったスニーカー。という長い長いタイトルで２０１５年に限定販売された本作がレギュラー化いたします。
激しい運動にお使いいただくことはできませんが、公園でお子さんと遊んだり、自然の多い場所へ赴いたり、ライブハウスではしゃいだり、ちょっとそこまで買い出しに行ったり。革靴では合いそうもないシュチュエーションで、是非お使いください。そして、ソールが減ったら、迷わずご一報ください。育っていくスニーカーを拝見させていただきながら、しっかりとリペアをさせていただきます。
追伸
工房開設から１３年（２０２０年現在）が経ち、私も２児の父となりました。公園で子供らと遊びながら、あの時のお客様の気持ちを噛み締めております。
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