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創作ストーリー
 
kokochi sun3 |MUKU BIG FOOT
 
ミニマルと
ユーモアと
 
 
2011年、冬。
楕円形の革に、すっと入れた切り込み。
 
でたらめな吹聴の言い訳は
思いもよらぬ場所へ、着地するのでした。
 

“それ” からはじまるはなし

 

 「それ」は、ひとの顔くらいの真ん中に、すっと入った切れ込み。大人がひろげた手のひら分の、革製の「それ」に、そっと、木型をかぶせてみたところから始まった。つま先から、徐々にかかとまで。靴用のワニと呼ばれるペンチで革をつまみ、引っ張ると、「それ」は、くぅっと音をたてるように、木型により添った。
 
 楕円形の革に、切り込んだ直線。かぶせた木型のせいで、「それ」は、柔らかな曲線となった。あたかも、そこにあったかのように、平然とした顔つきで、靴の履き口としてあることとなった、おいおい、日々、誰かの足首をつかまえるために存在する、Vのかたち

をした「それ」。一見、滑稽に見える靴の履き口は、まるで空と海のあいだにある、淡白く、なだらかに弧を描く線のように、しっかりと、それでいて穏やかな境界線を、木型と甲革の間に描いているのだった。
 
 「なんや、生きとうみたいやな。」
 2011年のとある日。その有機的な曲線を目前にし、作業場でうねる、軟体動物のような線の不思議に、わたしはしんと心をつかまれて、つぶやいた。

言い訳

 
 「1枚革でな、縫い目ない靴つくんねん。次の新作、絶対すごいで。ネット見ても、そんなんどこにもないやろ。できたら世界ひっくり返るで」
 と。「それ」と対峙する前のわたし。
 
 琴線に触れるものすべて。触れた瞬間に口に出さずにいられないのが性分で、結果、広げ過ぎた大風呂敷を、畳む術さえ知らぬ大馬鹿者がひとり、海岸の近くの古い住居兼工房で、のたうち回っている。
 
 木型に覆いかぶさった、楕円形の甲革。その先端、つま先あたりから。ワニでつまんで甲革を引き、木型の底面で釘を打ち、仮止めをする。それを徐々に、かかとまで吊り込んでいくと、どうしてもかかと側に歪みが生じる。革を引く向きを変えようが、皺をよせる場所を変えようが、幾度となく吊り込んでみては、あまってしまう甲革。それはまるで、ボタンをかけ違えたシャツの裾のように、滑稽な姿を演じていて、冬、きんと冷えた夜の最中。窓越しの月灯に照らされた、たがいちがいの革たちが、思わず吐いた白い溜息に混じって、物憂げに揺れていた。
 
 1枚の革をつかって、縫い目のない靴なんて、作ることができるのだろうか。と、逆立ちしても、できそうもないことを、考察もせずに思わず手を伸ばした、あるいは吹いた、11年前のわたし。その言い訳が、思わぬところに着地することを、この時のわたしは勿論、知る由もない。

comming soon...


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