Mani & Standardsのワニ
腕のように機能してくれている相棒
アッパー(甲のデザイン部分)を木型に沿わせる時の、「吊り込み」という工程で使用するのがワニと呼ばれる工具。つま先の曲がったペンチで革をつまみ、その下の金槌のような突起を支点に、てこの原理でアッパーを引っ張ります。そこに左手で釘を置き固定し、今度はワニの背中で釘を中底に打ち付け、アッパーと中底を貫通させます。つま先、踵、サイドと、この作業を繰り返すことで、アッパーは木型に沿い、靴の形になっていきます。いわゆる靴の顔を作る大切な工程を担っているのが、ワニと呼ばれる工具となります。
私の使っているのはMani & Standards(マニ・アンド・スタンダーズ)というブランドの日本産のワニです。2017年、1日にとてつもない足数の吊り込みをしなければならなかった時があり、藁にもすがる思いで購入したのを覚えています。
使い勝手は極めて良好で、握ったときの重さや、釘を打った時の力の伝わり加減。アッパーの引き易さ、ガタつきのなさなど。今まで使ってきたどのワニよりも優れており、使いはじめ、思わず感嘆の声を上げたほど。これを持ち作業をすると、無駄な力や動きが最小限に抑えられるので、手首の寿命が数年ほど伸びたはずだと、勝手に信じています。あれから数年経ちますが、これ以外を使う気がせず、毎日、私の腕のように機能してくれています。